スーツケースがない!

学生時代、貯めたアルバイト代は海外へ飛ぶために使っていました。最後(3回目)に向かったのは、北欧(スウェーデン・ノルウェー・デンマーク)です。卒業旅行でした。友達2人はローマで買い物するそう…… 興味のないわたしは、出発をずらすことにしました。スウェーデンのストックホルム空港で待ち合わせです。


ちゃんと会えるかな? 当時、携帯電話はありましたが、海外で使用するまでは進んでいません。ストックホルムのユースホステルの住所を手に、荷造りをしていました。すると、自宅に電話があって「突然やけど、ユースホステルを変えると思う。ストックホルムの空港で待ってるから」と言われました。


出発の前日に不安だな。でも、しゃーない。

そのまま一人で、KLMオランダ航空で飛び立ちました。乗り継ぎのアムステルダム空港に近づくと「濃霧のため、着陸が遅れます」というアナウンスが流れてきました。幸い、1時間弱の遅れで済み、ストックホルム行きの便には間に合いそうでした。


アムステルダムに着陸。ストックホルム行きのゲートへ急ぎました。ところが、霧がどんどん濃くなって、離陸のめどが立ちません。ありとあらゆる便について、アナウンスが続いていました。みんながイライラ。パニック状態です。


ストックホルム行きは「4時間半」の遅れで出航。現地の到着も、夕方から夜9時半に変わります。色々な手続きをしてたら、友達に会えるのは10時過ぎ? OちゃんとAちゃん、待っていてくれるかな~ わたし、新しいユースホステル、知らないんだけど。


ストックホルム空港に到着しました。祈る思いで手続きを済ませ、最後にスーツケースを取りに行きました。あれ? あれ? あれ? わたしのスーツケースが出てこない。嘘でしょ!


アムステルダム空港の大混乱を思えば、わたしのスーツケースが別の国へ運ばれたのが簡単に想像できました。Baggage claim へダッシュ! やたら混雑しています。


「見つかり次第、配送するので、滞在先の住所を記入してください」

「このユースホステルに宿泊する予定でしたが、友達が変更するかもしれないと言っていました。新しいユースホステルは、名前も住所もわかりません


わたしは、宿泊しないユースホステルの住所を書き、その場を後にしました。もう午後11時半くらいです。


生きた心地がしないまま、バックパック一つを背負って外に出ると、友達は待ってくれていました。でも2人も焦っています。夜中で、ユースホステルに向かう交通手段がないからです。空港では、床に寝転び始める人たちもいました。


待てど待てど、タクシーは来ない……ふと目の前に、一日の走行を終えたと思われる、空のバスがやって来ました。Oちゃんはスウェーデンに1年留学していたので、少しスウェーデン語ができます。運転手に掛け合い始めました。

「車庫に行く前に、ユースホステルまで送ってくれるって」


まじ? 大型バスをヒッチハイク?

「でも、3人そろって身売りされるかもしれへん。その時はごめん」とOちゃん。

けれど無事に、深夜1時ごろユースホステルに到着できました。親切な運転手さんでした。

 

わたしには、大事な仕事が残っています。宿泊予定だったユースホステルに、わたしのスーツケースが届くことを伝えなくてはなりません。「mizukiは宿泊していません」とスーツケースの受け取りを拒否されたら終わりです。

深夜1時を過ぎていたので、何度電話しても出てくれませんでした。心身ともに疲労のピークで、ファックスを送って一区切りつけました。


はあ~ くったくた。友達のタオル、着替えなどを借りて、シャワーを浴び、ベッドに入りました。


空港でもユースホステルでも、つたない英語で伝えてみたけど、大丈夫なのか?! そもそもわたしのスーツケースはどこにいったの? 見つかるの? 配送してくれるの? ファックスはちゃんと届いたのだろうか……


涙が、堰を切ったように流れ出しました。


翌朝9時ごろ、泊まっていたユースホステルにわたしのスーツケースが配送されました。パリに運ばれていたそうです。とにかく良かった!!!


10日ほど北欧3か国で過ごし、それから一人でベルギーへ向かいました。ホストファミリーに再会するためです( "Belgium")。3年ぶり! 


懐かしいベルギーで1週間ほど、心温まる日々を過ごしました。帰路につくには、まず、ブリュッセルからアムステルダム。そして、KLMオランダ航空で日本へ。


そうしたら…… 関西国際空港でスーツケースがない!


そういえば、アムステルダムで乗り継ぎ時間が1時間半くらいしかなかったのです。わたし(人間)が移動するのもギリギリでしたが、「これじゃ、飛行機から飛行機へ、荷物を仕分け、移動させる時間が足りないのでは?」と思っていました。


予感は的中でした。わたしのスーツケースは飛行機に搭載されていませんでした。


帰国しているので余裕があります。スーツケースなしで帰宅するのは、楽ちんです! 翌日にはスーツケースを受け取り、めでたし、めでたしでした。



映像翻訳者 mizuki

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