Go Early, Go Hard

かれこれ１年、ニュージーランド国内ではコロナ感染がほとんどありません。基本的に、毎日ゼロです。（前回の新規感染は３人 ⇒ 2021年２月28日）

パンデミックなのに、なぜこの国は Covid-19 Free （コロナフリー）を維持できているのでしょうか？

※英語では、新型コロナウイルス感染症を Covid-19 と呼びます。

"coronavirus disease of 2019"

の略称で WHO が2020年２月に発表しました。

※free は「～から解放されている」という意味です。

Covid-19 がパンデミックとして認定されたのは、2020年３月11日でした。そのころ、NZでの感染者は５人でしたが、その後２週足らずで100人を超えました。死者は出ていません。けれど NZ首相は

"We save lives"「経済でなく人命が第一である」

と明言し、

"We go early, go hard" 「手遅れになる前に、早い段階でコロナの国内感染を根絶する」

と国内外に訴え、

３月25日に State of National Emergency（国家緊急事態） を発令しました。完全な国境封鎖と徹底的なロックダウン (Alert Level 4) が始まりました。

国民全員が自宅待機です。必要な外出のみ許されます。また２メートルの physical distancing を守らなければなりません。国民全員が一致団結し、忍耐に忍耐を重ねました。

「最も身近な人たち、愛する人たちと過ごす貴重な時間だ」と互いに励まし合い、そんな機会に感謝する声も挙がりました。

国境が完全封鎖されているので、世界に点在する Kiwis は帰国できません。非常に厳しい状況です。

約１か月後、国内の新規感染者がゼロとなり、４月27日 Level ３への規制緩和となりました。あくまで「感染状況確認のため」で、感染者が一人でも出たら Level 4 に戻ります。

その後２週間、国内の新規感染者がゼロの状態が続いたため、５月11日には Level 2 となりました。そして、５月13日 State of National Emergency（国家緊急事態）が取り消されました。

さらに１か月、国内の新規感染者がゼロの状態が続いたため６月８日、Level 1 へ規制が下げられました。

段階的な規制緩和だったので、国民も各自の行動を見直し、その責任を考えるようになりました。

国境では、ホテルを利用して隔離施設が設けられ、海外からの入国・帰国者が２週間過ごすことになります。当然、ここでは感染者が出ます。６月８日現在、22人です（外国人も含まれています）。

けれど、そこでコロナフリーだと認められたり、治療を受けて回復したりしても、その人たちから新規感染が生じることもあるのです。国内で、ちょっとしたクラスターが起きます。（前回の新規感染は３人 ⇒ 2021年２月28日）

ですから、地域ごとに（といっても、最大都市である Auckland で）規制レベルは何回か引き上げられました。Level 3と2の繰り返しです。

濃厚接触者に限らず、クラスターが発生した施設に出入りした人たちに２週間の自宅待機も要請します。

・国境の隔離施設だけで（海外からの入国者・帰国者の間だけで）、コロナ感染が起きる

・国内の新規感染者は、基本的にゼロである

2020年７月には、コロナフリーになったニュージーランドが世界の注目を浴び始めました。なぜニュージーランドは国内感染を根絶できたのか？

英国BBC（2020年７月10日）は、次の３点を挙げています。

1. Jacinda Ardern took the unprecedented step of closing New Zealand's borders

NZ首相が、完全な国境封鎖という前代未聞の措置を取った

2. It locked down early and aimed for elimination

国内では早期のロックダウンを実行し、コロナの根絶を目指した

3. Effective communication and public compliance

コロナ対策について、政府が国民の心に働きかけ、国民が受け入れた

2020年３月25日～５月11日、さらには６月８日まで続いたロックダウンの間でも、NZ政府は国民から80%以上の支持率を得ていました。

言うまでもなく、WHOからも称賛されます。

speedy testing（早期検査）

contact tracing and isolation（接触者の追跡と隔離）

rigorously adhering to public health guidance（国民への健康管理指導の徹底）

も挙げられています。

For your reference

"New Zealand's COVID‐19 elimination strategy"

US National Library of Medicine, National Institutes of Health（米国国立衛生研究所）

2021年2月、Auckland で「３人」の新規感染が起き、Level 3 に戻るハプニングがありました。しかし、2021年6月現在も、全国コロナフリー（ Level 1 ）です。

この状態は、簡単に生まれたのではありません。

首相が国民に、命の尊さを訴えています。

首相が誰より、医療従事者へ敬意を払っています。

首相が強い信念をもって、リーダーシップを発揮しています。

結果的に、国民が行動に責任を持つようになりました。

経済的打撃は大きく、批判もあります。そうであっても、Jacinda の人柄とリーダーシップに信頼をおく国民は、去年10月の総選挙で、彼女を首相として再選しました（過去記事）。圧勝でした。

この方は、歴史に残る偉大な首相だと思います。