An Image of Hope
前回に続いて、ニュージーランドの首相 Jacinda Ardern を紹介します。
上の写真は、イギリスの大手新聞社 The Guardian が "An Image of Hope" として取り上げたものです。2019年3月15日 Christchurch で mosque shootings が起き、翌日現場に赴いた首相をガラス越しに撮影しました。
このテロでは、イスラム教のモスク2つで礼拝者たちが銃で乱射され、51人が死亡、40人以上が負傷しました。ニュージーランドで、史上前例のない大惨事となりました。
ちなみに、51という人数は、日本の人口に換算すると1300人になります。
犯人はオーストラリア人。犠牲者たちはシリアやパキスタン、インドネシア出身の移民や難民です。雑な言い方をすれば「外国人が外国人を銃乱射した事件」でした。
"An Image of Hope" として Jacinda が世界的に報道されたのは、テロに対する対応が思いやりのある情け深い人間として、また進歩的な政治家として国際的に高く評価されたからです。
例えば、米国の新聞社 The Washington Post をご覧ください。
Facebook の最高執行責任者 Sheryl Sandberg は、Jacinda を "political prodigy (政治上の天才)" と呼び、米国のニュース雑誌 Time は「世界で最も影響力のある100人」の一人に挙げました。
Hijab(イスラム教のヴェール)をまとい「ニュージーランドは悲しみのうちに一つになっている (We are united in our grief)」と涙を分かち合い、未来へ進む意志を語った彼女。その姿に多くの人が感動しました。
装いは、彼女の一端にすぎません。「イスラム国から移民や難民を受け入れるからだ」という意見に対しては "a disgrace(侮辱だ)" と諫めます。
事件の翌日、Jacinda はイスラム教徒と抱き合いながら、すべての犠牲者の葬儀費用を政府が全額負担することや銃規制法を改正することを約束しました。実に、世界のイスラム文化から賞賛の声が上がります。
イスラム教の家庭に生まれたロンドン市長
イランで生まれ、アメリカに移住したジャーナリスト・政治アナリスト
パキスタン人の父親を持つ英国の俳優・TVキャスター
トルコの法律家
ドバイの政治学教授
などが次々と tweet します。
・社会で多様性を受け入れ、平等視する重要性を彼女と話したことがある。
・強いリーダーシップを持ち、異文化へ敬意を払って悲しみを共にする。
・決断の速さと強いリーダシップに深い感動を覚える。
・イスラム教徒が悲しみにくれる時、Jacinda は "You are us!" と言って、共にいてくれる。
・国のリーダーがこれほど追悼と敬意を表してくれるとは…… わたしたちはこのような正義と憐みを乾き求めていたのではないか。
・彼女は信念を貫く人だ。揺るがない。
・庶民と共感できる人こそ国のリーダーに相応しいことを彼女は示してくれた。
英国、オーストラリア、米国など西洋諸国からも感嘆の声が上がります。
・これこそ異宗教が共存するという象徴ではないだろうか。
・彼女は思いやりを始め、偉大なる人間性を映し出している。
・彼女は人間の尊厳、美しさ、勇気そのものだ。
BBCのこのインタビュー(3月21日) でも彼女の人柄がよく表れていると思います。
銃法改正の早さは、彼女の決断力と実行力の表れです。翌週には具体案が議題に挙がり、その後法律が変わりました。世界から高い評価を得ました。
下のビデオは、テロから6日後(3月21日)に銃法改正の具体案を述べたものです。
ニュージーランドの素晴らしい点は、生まれた国を離れ、生きる国としてニュージーランドを選んだ移民や難民に、心から敬意を払う姿勢です。多文化・多宗教・多人種がお互いを尊重する姿が徹底しています。その象徴が、国の首相 "An Image of Hope" となりました。
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