ノーベル賞
教授(研究者)の秘書をして1年目の時。
1か月ほど海外出張なさる先生(教授)から「郵便物は事前に開封し、電話の際に内容を伝えてほしい」と言われていました。
ある日、Royal Swedish Academy of Sciences(スウェーデン王立科学アカデミー)から郵便が届きました。「極秘」と記されているので、念のため開封しないでいました。というのは「昔、xxxについての論文が評価されて、ノーベル賞候補になったことがある」と聞いていたからです。
まさか、先生がノーベル賞受賞?
ドキドキしながら、夕方5時過ぎの電話を待ちました。先生は「いいから、開けて!」とおっしゃっています。手に汗を握るとはこういうこと。わたしは焦って、手紙の上から下へ目を動かしました。
「受賞の連絡のようです」
「ふーん」
誰にも言えぬまま帰宅し、興奮のあまり寝られませんでした。論文名が載っていなかったのは、情報漏洩を防ぐためなんだろう。メール連絡でないのも、セキュリティが万全とは限らないからかな? じゃあ、この後、スウェーデンから直接、電話がかかってくるかもしれない。
翌日、先生とまた電話。一通りやりとりを終えたところで、
「ちょっと落ち着いて……昨日の郵便物、もう一回読んでくれない?」と言われました。
ゾっとしました。
受賞者(nominee)と選考者(nominator)を読み間違えていたのです!
「先生、nominatorにならないかという依頼でした。読み間違えて、申し訳ございません」
「それ、毎年来るから……驚かさないでよ」
nominatorは文字通り、nominateする人(選考者)です。
nomineeは、nominateされる人(受賞者)です。
はあ、ほんまにびっくりした!
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